AIとの付き合い方

AIで作るサイト・システムを、持続化補助金に乗せて売る9項目(第20回公募要領で確認)

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AIで作るサイト・システムを、持続化補助金に乗せて売る9項目(第20回公募要領で確認)

「補助金が出るので、ホームページ作りませんか」

この一言を付けられるようになると、45万円の見積を、お客さんは15万円で買います。

あなたの見積は、1円も削っていません。 使うのは小規模事業者持続化補助金です。

「補助金が出るので、ネット広告を打ちませんか」
「補助金が出るので、AIでシステムを入れませんか」

同じ一言が、この3つに付けられます。

同じ45万円の見積書が2枚並び、左はお客さん負担45万円、右は補助金30万円とお客さん負担15万円に分かれる。見積の金額欄はどちらも45万円のままで、見積は1円も削らないの札が添えられ、下では見積書を手渡す二人が描かれている図

あなたのお客さんが申請して、あなたの請求書が、そのまま補助対象経費になります。 ホームページも、ECサイトも、業務システムも、アプリも、この中です。ネット広告は別の枠で出ます。

(この記事の数字はすべて、第20回公募要領・第8版を2026年9月3日に確認したものです)

つまり——あなたがAIで作っているシステムも、サイトも、広告の設計も、この制度に乗せて売れます。 提案の切り口が「安くします」から「国が3分の2を出します」に変わる。値段の話をしていた場所で、中身の話ができるようになります。

前回は、自分の会社でこの補助金を使う版を書きました。今日は、あなたのお客さんに使ってもらう版です。

「AIで作れるんでしょ。だったら、もっと安くなりますよね」——去年まで100万円で受けていた仕事が、いまはこの前提で値切られる。その会話ごと、別の場所に移せます。

ひとつだけ、先に断っておきます。この制度は、事業者本人が自分で考えた計画にしか、お金を出しません。 公募要領の1ページ目に、事業者自らが検討したような記載が見られない場合は評価に関わらず不採択・交付決定取消、と書いてあります。だからこの記事は、代行のやり方の話ではありません。お客さんと一緒に棚卸しをして、お客さんの言葉で書いてもらう。そのときにあなたが持っておくべき地図です。

あなたのお客さんは、対象かどうか

対象かどうかは、従業員の数だけで決まります。

業種 常時使用する従業員
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

会社の役員と、同居している親族の従業員は数に入りません。

取引先リストを上から見ていくと、けっこうな数がこの線の内側にいます。 個人事業主の飲食店。夫婦でやっているパン屋。従業員3人の工務店。あなたが「予算がないから」と提案を諦めた相手が、たいてい入っています。

補助率は3分の2。 そして補助上限は、選ぶコースで4段です。

コース 補助上限
そのまま(通常枠) 50万円
インボイス特例 100万円(50万+50万)
賃金引上げ特例 200万円(50万+150万)
両方 250万円

賃金引上げ特例の条件は、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増やすこと。達成できないと上乗せ分だけでなく全体が出ないので、これはあなたが勧める話ではありません。 お客さんが自分で決めることです。

そして、あなたのスケジュールが縛られます。 流れはこうです。

  1. お客さんが事業計画を書く
  2. 申請(受付開始2026年11月5日・締切12月15日17時)
  3. 採択の発表(2027年3月ごろ)
  4. 交付決定
  5. ここから発注・制作・支払い(2028年3月31日まで)
  6. 実績報告(2028年4月10日まで)→ お客さんに入金

事業計画を書くから実績報告までの六段を並べ、申請と採択発表のあいだが約三か月の待ち、交付決定と発注のあいだに太い縦線を引いてここより前に着手すると全額対象外と示した図

申請から着手まで、3か月以上あきます。 秋に提案した案件の制作が春から、というスケジュールになります。この間、お客さんの気持ちは冷めます。そこをどう繋ぐかは、あなたの仕事です。

満額ラインは、経費45万円

ここからが実務です。あなたの商品——AIで作るシステム、サイト、広告の設計——を、この補助金を使ってどう売るか。 見積の組み方と、踏むと全部が消える地雷を、9項目に並べます。

1. ウェブサイト関連費は、経費45万円が満額ライン。

ホームページ、ECサイト、システム、アプリ、業務効率化のソフトウェア、顧客管理ソフト。あなたが作るものは、ほぼ全部この費目です。

補助金として出るのは30万円まで。補助率が3分の2なので、経費45万円でちょうど満額。150万円の見積を出しても、ここから出るのは30万円です。

つまり——150万円を1本で出すより、45万円の第1期と、その先を分けたほうが、お客さんの体感は良くなります。 第1期の自己負担は15万円。動くものを見てから、次を決められます。

経費45万円で補助金30万円という満額ラインを示し、150万円の見積を出しても補助金は30万円のまま変わらないことを対比した図

2. どの費目に乗せるかで、通り方が変わる。

  • 自社サイト・ECサイトで使う写真や動画 → ウェブサイト関連費(広報費ではない)
  • チラシ、カタログ、看板、DM、ネット広告、バナー広告、SNS広告、SNS運用代行 → 広報費(上限30万円)
  • ソフトウェア → ウェブサイト関連費(機械装置等費ではない)
  • システム開発の外注 → ウェブサイト関連費(委託・外注費ではない)

そして、ウェブサイト関連費だけの申請も、広報費だけの申請もできません。 必ずほかの経費と一緒に出す必要があります。ここは提案書の作り方に直結します。ウェブ単体で持っていくと、そもそも申請の形になりません。

全部積むと、あなたの売上375万円分が乗る

45万円は、ウェブサイト関連費だけを見たときの満額ラインです。制度全体の天井は、もっと上にあります。

補助上限がいちばん高くなるのは、インボイス特例と賃金引上げ特例の両方を満たしたときです。通常枠の50万円に、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が乗って、補助上限250万円。補助率は3分の2ですから、逆算すると補助対象経費は375万円まで積めます。

ただし、375万円をあなたのウェブの仕事だけで埋めることはできません。ウェブサイト関連費から出る補助金は30万円まで、広報費も30万円までで頭打ちだからです。天井まで積むなら、残りは別の費目で持つことになります。

費目 補助対象経費 出る補助金
ウェブサイト関連費 45万円 30万円
広報費 45万円 30万円
機械装置等費など(費目としての上限なし) 285万円 190万円
合計 375万円 250万円

つまり——あなたの売上375万円分が、この制度に乗ります。

ここで効いてくるのが、元請けとして一括で受けるという形です。

あなたがホームページを作る。同じ計画の中で、広告も打つ。そしてお客さんが機械や設備を必要としているなら、それもあなたを通して仕入れて納める。ウェブと広報で90万円、機械装置等費で285万円。3本を1つの計画に載せて、あなたが元請けとして受ける。使い方はいろいろあります。

ただし、この形には注意が3つあります。

  • 1件50万円超(税込)は、2者以上の見積が要ります。 285万円の機械を通すなら、必ずここに当たります。そして見積は、お客さん自身が別々の会社から取ることになっています。あなたが2本用意するのではありません(詳しくは、この後の6番)
  • 親族や関係会社への発注は対象外です。 3親等以内の親族、親会社・子会社・関連会社が相手だと通りません(この後の5番)
  • 賃金引上げ特例は、達成できないと補助金の全体が出ません。 250万円の天井はこの特例込みの数字なので、天井を狙うほど、お客さんが負う条件は重くなります。 これはあなたが勧める話ではなく、お客さんが自分で決めることです(前の節に書いたとおり)

組み方は、会社ごとに違います。どの費目に何をどれだけ載せられるかは、お客さんの業種と、やろうとしていることで変わります。必要なら、XのDMをもらえれば個別にお答えします。

見積に書いても、出ないもの

3. 「コンサル費」「ディレクション費」は、その名前だと出ません。

公募要領は、ウェブサイトおよびシステムに関連するコンサルティング・アドバイス費用を対象外と書いています。全体の対象外リストにも「コンサルティング、アドバイス費用」があります。

これは見積の書き方の問題です。開発・構築・更新・改修・運用の実費として書く。 実際にやっているのがそれなら、そう書けばいい。名前のせいで落ちるのは、もったいない。

4. 申請書を書く手数料は、補助金からは出ません。

はっきり書いてあります。「補助金応募書類・実績報告書等の作成・送付・手続きに係る費用」は補助対象外。申請支援の手数料を補助金で回収する設計はできません。

5. お客さんが同業だと、外注できません。

委託・外注費は「自ら実行することが困難な業務」に限られます。公募要領は例まで挙げていて、デザイン会社によるデザインの外注など、その事業者が通常業務として実施している業務はここに含まれない、と書いています。お客さんが制作会社なら、制作の外注は通りません。

親族(3親等以内)や、親会社・子会社・関連会社への発注も対象外です。

コンサル費・ディレクション費・申請書の作成手数料・同業への外注・親族への発注が、いずれも補助対象外として×印で示された図

3枚の書類の日付を、交付決定の後ろに揃える

6. 50万円を超えると、相見積が要ります。

発注総額が1件あたり50万円超(税込)だと、2者以上の見積が必要です。あなたの見積が、2本のうちの1本になります。 そして見積は、お客さん自身が別々の会社から取ることになっています。あなたが2本用意するのではありません。

7. 50万円(税抜)以上のサイト・システムは、処分制限財産になります。

通常は取得日から5年。作り直しや譲渡には、事務局の承認が要ります。「3年後に全面リニューアルしましょう」という提案が、その5年に引っかかります。 ただし、目的を果たすための改良や機能強化は「処分」に当たらないと書いてあるので、改修は続けられます。

8. これが最大の地雷です。交付決定の前に着手すると、全額対象外。

現場で何が起きるか。お客さんが「採択されました、すぐ始めてください」と電話してくる。ここで着手すると、その案件の補助金はゼロになります。

採択の通知は、スタートの合図ではありません。 採択 → 交付決定 → ここからやっと発注、の順です。契約書の日付も、発注書の日付も、請求書の日付も、交付決定の後でなければいけません。

交付決定日の縦線の右側に契約書・発注書・請求書の三枚が並び、三枚とも決定の後ろに揃えると示される。下に50万円を超えると2社の見積、支援した人の名前と金額を書く、が並ぶ図

あなたが守る順番は、こうです。 交付決定の通知を、お客さんから見せてもらう。それから発注書を出してもらう。それから着手する。この3ステップを自分の受注フローに入れておくと、事故が起きません。

支払いの期限は2028年3月31日。銀行の引き落とし日も、この中に入っている必要があります。 3月末に納品して4月に入金、では間に合いません。

9. 有料で手伝ったら、名前と金額が申請書に載ります。

第三者の支援を受けた場合、その相手方と支援に係る金額を書く欄があります。着手金でも成功報酬でも、名目のいかんを問わず。 書かないと虚偽の報告として不採択・交付決定取消です。

そして公募要領には、支援した側にヒアリングや現地調査を行う場合があるとも書いてあります。

これは脅しではなく、線引きです。隠れてやる商売にはできない。堂々とやるなら、制度が想定している行為です。 私自身も、名前と金額が書かれる前提で設計しています。

そしてもうひとつ。第20回から、審査の観点に「デジタル技術を有効的に活用する取組が見られるか」が入りました。あなたが提案しているものは、審査で評価される側にあります。

実際に1件ぶん、設計から金額まで通した記録が「エステのカルテアプリを、補助金で作る」にあります。何にいくらで、どの費目に載せるかの見本として読めます。

最後に、ひとつ

この申請書を一緒に作るAIを、いま作っています。

AIが書くのではありません。事業者本人に順番に質問して、散らかった答えを制度が聞いている形に並べ直して、「ここがまだ埋まっていません」と指さす。棚卸しの相棒です。書くのは、事業者本人の言葉です。

あなたがお客さんの隣に座って、一緒に画面を見ながら使う——そういう道具を想定しています。

制作者と経営者が机に並んで座り、一台の画面を一緒に見ながら棚卸しを進めている図

まだ作っている途中です。できたら、まずXでお知らせします。

公募要領の数字は、回ごとに変わります。次にお客さんへ提案する前に見直せるよう、この記事はブックマークしておいてください。 組み方が会社ごとに違う話は、XのDMをもらえれば個別にお答えします。


※制度の数字は、公募の回次で変わります。この記事の数字はすべて、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領(第8版・2026年7月21日)を、2026年9月3日に確認したものです。提案の前に、必ず最新の公募要領をご自身で確かめてください。

値切られる会話から出る——45万円の枠に、去年は入らなかった物が入る(12分)

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