AIとの付き合い方

エステのカルテアプリを、補助金で作る ── 30万補助が出る

A AIKA 読了 約9分
エステのカルテアプリを、補助金で作る ── 30万補助が出る

店の記録システムの設計図3枚。何を記録するか、どう入れるか、どこから来てどこへ行くか、が左から右へ並ぶ図

お客さんのカルテ(施術の記録)が、紙のままになっている。
後から見返せない。予約サイトに打ち込むのも手間で、続かない。

そういうエステサロンの経営者と、記録の仕組みを一緒に設計しました。相談は43分です。

結論を先に書きます。
決まったことを設計図にすると、3枚にまとまりました。何を記録するか。どう入れるか。どこから来て、どこへ行くか。
そして、使っている予約システムが持っている物は、取ってくればいい。作る量は、そこで減りました。

この記事の主役は、その3枚の設計図です。
何が決まり、何が決まらなかったか。いくらで、どれくらいで作れるか。補助金の申請にどう載せるか。
順番に書きます。

紙の記録の束と、予約サイトに手で打ち込む画面。後から見返せない、続かない、の2つの困りごとを描いた図

3店舗のサロンの話

エステサロンを、3店舗で営んでいる方がいます。仮に「パラノイドサロン」としておきます。経営者は50代の女性で、店にはiPhoneが3台あります。

施術の記録は、紙です。混んでいる店では、お客さんが続けざまに来るので、手で書く時間がとれない。空いている店なら書けるけれど、書いた紙は後から見返せない。

予約は、外部の予約システムと、予約経由の集客サービスの2つで受けています。お客さんの名前や来店日は、そこに入っています。ただ、何をしたかの記録は、どこにもありません。

LINEの友だちは約800人。問い合わせは1日10件ほど来て、その返信に時間を取られている。本人の実感では、施術の次に時間を食っているのがこれでした。

もう1つ、先に書いておくことがあります。この方は、相談に来る前に、自分でAIを使っていました。集客サービスからは取り出せないはずのお客さんのデータを、Claudeに頼んで引っ張り出して、7月分まで手元に持っていた。AIを知らない人に、AIを教える話ではありません。

サロンの今の状態。紙の記録、iPhone3台、予約システムと集客サービス、LINEの友だち約800人と1日10件の問い合わせ、そしてAIで取り出したお客さんのデータを並べた図

何を記録するか(設計図の1枚目)

記録の仕組みの話は、補助金の相談の途中で、私が持ち出しました。AIがあるなら、記録のシステムも作れるのでは、と。経営者は10秒で、欲しいです、と返しています。

最初に、記録する項目を決めました。相談の場では、私が紙に図を描きながら話しています。

経営者が最初に口にした形は、こうでした。お客さんごとに棚があって、そこへ行くと、日付と、施術の内容と、コメントが入っている。呼び出せば、出てくる。

私は、項目を1つずつ数え直しました。日付、名前、施術の内容、回数、コメント。

そこで一度、念を押しています。本当に、これだけでいいですか。

すると、部位が足りない、となりました。回数券のお客さんが多いので、どこを施術したかが要る。肩なのか、腰なのか、首なのか。

ここで項目は8つになりました。名前、電話番号、メール、来店日、来店回数、施術の内容、回数、部位。

あとで足された項目が、もう1つあります。誰が施術したか。担当者の欄です。これは40分すぎ、予約システムの話をしている最中に出てきました。

記録する項目の一覧。名前、電話番号、メール、来店日、来店回数、施術の内容、回数、部位の8つに、あとから担当者が足された図

必ず入れる項目は、名前だけにする案が出ました。電話もメールも、無いお客さんがいるからです。お客さんに番号を振る案も出て、その場ではどちらとも決まっていません。

そして「回数」は、通っている回数なのか、その日に施した回数なのか、2つの意味が混ざったまま進んでいます。項目の名前は、用途を決めないと揺れる。設計図に残った、正直な穴です。

必須は名前だけ、他は空欄でもよい、という印。回数の欄には「通った回数?」「その日の回数?」と2つの吹き出しがついた図

金額は、要らないと決まって、2分で戻ってきた

項目の中で、一度決まって、すぐ覆ったものがあります。金額です。

金額は、要らないですか。

金額は要らないですね。

あると便利ですけどね。後で分析するのに。

そこから、上得意のお客さんの見分け方の話をしました。来店の回数と、使った金額と、最後に来た日。この3つがあれば、前はよく来ていたのに最近来ていない人が分かる。メモ欄に「肩の施術。腰も気にしている」とあれば、腰の提案ができる。これは人がやらなくても、AIがやります。

ただ、そこで私は言いよどみました。

でも、これはあれですね。ここは記録で。こっちは、なにか。

分析ですね。

言葉を先に置いたのは、経営者のほうでした。記録と分析は、別の話。分析は別の欄に入れておく。だから記録には、金額と日付が入っていればいい。

「要らない」から「入れる」まで、2分10秒でした。用途が見えた瞬間に、項目は変わります。

金額の項目が「要らない」から「入れる」へ2分10秒で戻る流れ。間に分析の話が挟まり、記録と分析が別の箱に分かれる図

どう入れるか(設計図の2枚目)

次に、画面の流れです。

まず、スマホのアプリではなく、スマホのブラウザで開くウェブアプリにしました。経営者は、今使っているAIのチャットをそのままアプリのようにできないか、と考えていました。私は、それでは難しい、と切っています。ウェブアプリなら、3台のiPhoneからログインして、従業員も同じものを見られる。

入力は、声です。経営者は最初から、マイクで入れるつもりでした。手で打つのは、続かないと分かっていたからです。

ただし、声には誤変換があります。音声入力で、私の名字は、まず正しく出ることはありません。知り合いの名前を言うと、別の人の名前や、町の名前になる。誤変換は、起きるか起きないかではなく、自分で直す手間が残るもの、として片づけました。

スマホのブラウザで開くウェブアプリを3台のiPhoneで共有し、声で入れる。マイクの横に「名字が別の名前になる」と誤変換の注意書きがついた図

入れるタイミングは、お客さんが帰った後です。ここで私は、手書きを案として認めていません。手書きは、後から見られない。手で打つか、声で入れるか。

流れは、こうなりました。記録を入れる。保存する。「完了しました」と返る。このお客さんが来た、記録を出して、と言えば出てくる。

画面の一番上には、今日の予約が並びます。そこから1人を選ぶ。施術のあと、声で今日の分を入れる。ここまで決まったあとで、1つ抜けが見つかりました。

帰った後だけでなく、来たときにも見る。前回の記録を見てから、施術に入る。現場の手順は、経営者しか持っていません。私が問いを出し、経営者が「あ、そうか」と言って、順番に1つ足されました。

画面の流れ。今日の予約から1人を選び、前回の記録を見て、施術のあと声で入れて保存し、完了と返るまでを左から右へ並べた図

どこから来て、どこへ行くか(設計図の3枚目)

ここが、相談の中でいちばん大きく動いたところです。

予約システムには、お客さんの名前と来店日が入っています。施術の記録は入っていない。では、記録の側から、予約の情報を毎回打ち直すのか。

私は、こう思い込んでいました。

あの予約システムは、AIとつなげられなかったですよね。確か。

いえ、つなげられるんです。

3秒後の即答でした。

つなげられます。まだ何回かしかやっていませんが、最初は手で打っていたのが、Claude Codeを使ったらつながりました。

思い込みは、私のほうでした。

では、予約システムからデータを取ってくることを考えたら、これも取ってこられますか。

ですね。

それなら、毎日取ってくるようにして、今日の施術は誰、と出せますね。

予約システムをうまく使えばいい、ということですね。そうすると、すごく簡単ですね。

経営者は、相談の前に、もう自分でつないでいました。つなげられないと思っていたのは、私だけです。

「つなげられなかったですよね」と言う私と、「いえ、つなげられるんです」と返す経営者。予約システムとAIが線でつながっている図

これで、設計図の3枚目が決まりました。予約システムから、毎日、予約の情報を取ってくる。1時間に1回でもいい。取ってきた予約が、画面の一番上に並ぶ。名前も来店日も、そこにある。記録の側で打つのは、施術の内容と、金額と、コメントだけになります。

過去の分は、CSVで入れます。予約システムからも集客サービスからも、名前と来店日は取り出せる。それを先に整えて、最初に流し込む。紙にしか無い施術の記録は、手が空いた人に、分かるところだけ打ってもらう案が出ました。

保存先は、クラウドのサーバーです。安く、無料でも始められる場所があります。

経営者の言葉を借りれば、その人の分は全部そこに入っているので、そこから持ってきたほうが絶対にいい。私が言ったことではなく、経営者が言ったことです。

データの流れ。予約システムから毎日取ってきた予約が画面の一番上に並び、記録の側で打つのは施術の内容と金額とコメントだけ。過去の分はCSVで最初に流し込み、保存先はクラウドのサーバー、という図

あるものを、先に確かめる

相談の後で、私が1つ調べました。

使っている予約システムに、簡易な記録の機能が付いていました。お客さんごとにメモと画像を残せて、メモをピン留めでき、担当者ごとに見る権限を分けられ、クラウドに保存される。相談の場では、このことは一度も話題に出ていません。

では、作らなくていいのか。

公式の案内を読む限り、その機能に無いものが3つあります。項目を分けて記録すること。声で入れること。分析へ出す出口。管理画面の中までは確かめていませんが、この店が欲しかったのは、この3つです。

だから、作るのはこの3つに絞れます。名前と来店日は、予約システムが持っている。メモと画像は、予約システムでも残せる。足りない分だけを作る。

作る前に、あるものを確かめる。順番はこれだけなのですが、相談の場では出ませんでした。私も、後から調べています。

予約システムが持っている物と、作る物を左右に分けた図。左に名前・来店日・メモ・画像・権限、右に項目を分けた記録・声の入力・分析の出口の3つ

いくらで、どれくらいで

本来の用件は、補助金の相談でした。設計に夢中になって、私は途中で、こんなことをしていたら申請書が書けない、と自分で言っています。それでも、費用の見立てだけはしました。

もし私が作るなら、まずこの記録の本体を作ってくれ、と頼む。話はそれからです。本体だけなら、テストを入れて2日。プログラマーの時給を1万円とすると、16時間で、原価は16万円。

そして、難しいのは技術ではありません。運用です。従業員が、施術のあとに入れてくれるかどうか。そこが本題だと、私は言っています。

もし経営者が自分で作るなら、AIに頼んで1時間後に見る、を週に4回ほど。張りつく時間ではありませんが、週8時間は要る見立てでした。

工数の見立て。記録の本体だけならテスト込み2日、16時間、時給1万円で原価16万円。その横に「難しいのは技術でなく運用」と書かれた図

外注は高そうだ、と経営者は心配していました。私の見立てでは、そんなにはかかりません。

1つ、はっきりさせたことがあります。私が作って、私が請求する形は、お金の流れとして通りません。要件定義までが私の仕事で、作るのは経営者本人か、別の業者です。

16万円は、原価です。売値にするなら、少なくとも24万円ほど。さらに追加の機能も出てくるでしょうし、今はざっと要件定義をしただけです。それでも、30万円あれば十分に作れる見立てです。

この店は、小規模事業者持続化補助金で申請する、と決めました。この補助金では、システムの開発は「ウェブサイト関連費」という費目に入り、補助率は3分の2で、この費目から出るのは最大30万円です。経費が45万円のとき、ちょうど30万円になります。

ウェブサイト関連費だけでは申請できないので、看板や広告と一緒に出します。交付決定の前に発注したものは、対象になりません。作りたくなっても、順番は申請が先です。もちろん、採択されなければ1円も出ません。

補助金の計算。経費45万円に補助率3分の2で30万円が出る。順番は申請が先で、発注は交付決定の後、と矢印で示した図

あえてやらないこと

設計図から外したものも、書いておきます。

写真は、後から。今は無くていい。

LINEの自動返信は、別件です。1日10件の問い合わせは重いのですが、返信の教え込みに時間がかかる。記録の本体と一緒にはしません。

分析は、欄だけ作って、別の話にしました。金額と日付が記録に残っていれば、分析は後からできます。

そして、まだ作っていません。相談の中で経営者が言ったのは、やってみてダメだったら考えます、でした。設計図まで、です。

設計図から外した4つ。写真は後から、LINEの自動返信は別件、分析は欄だけ、まだ作っていない、を並べた図

もう1つ、相談の場ではまだ考えていなかったことがあります。この補助金の申請の締め切りは、12月15日です。それまでに時間があります。よくよく考えて、外した機能を戻すなら、上限の45万円、補助30万円に収めてしまうのも手です。

まとめ

店の記録の設計図は、3枚に分ければ足ります。何を記録するか。どう入れるか。どこから来て、どこへ行くか。8つの項目と、画面の順番と、予約システムからの流れ。

作る前に、使っている予約システムが何を持っているかを確かめる。持っている物は、取ってくる。作るのは、足りない分だけ。そして、補助金は交付決定の後に発注する。順番は3つです。

予約システムの話が決まったあと、経営者が言ったことがあります。Claude Codeが全部つながったこと自体が、今日はすごく良かった。ずっと、それが悩みだったんです。

まとめ。3枚の設計図と、あるものを確かめる、足りない分だけ作る、申請が先、の3つの順番を1枚にした図

同じような仕事のご相談は、XのDMで受けています。記録システムの要件定義と、補助金の申請書づくり。料金は、補助金の申請まで込みでお受けします。

一人で30分しゃべって要件定義を作った話は、運転中の30分で、写真管理アプリの要件定義を済ますためにAIができることに書いています。

この話は動画にもしました。紙のカルテを、AIでデジタルカルテにする|エステの記録システムは30万円でお釣りが来る(7:32)

※守秘のため、業種や店舗数、経営者の設定を変えています。設計図の中身と、時間や工数の数字は実際のものです。

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