AIとの付き合い方

AIを使って6割引で自分のサービスを売るための、身も蓋もない組み立て方

A AIKA 読了 約10分
AIを使って6割引で自分のサービスを売るための、身も蓋もない組み立て方

お客さんにサービス提供できるときに、補助金と抱合せて販売すると強いです。
お客さんにとっては半額以下になることが多いから。300万円の事業なら、負担は100万円。6割以上の値引きと同じことになります。
今回は1/3の負担で自分の商品サービスを売る補助金を使う方法を解説します。

前回、エステサロンの施術記録アプリの設計図を作りました。3枚にまとまって、45万円で作れて、補助金が30万円出る。ここまでが前回の話です。

45万円と書かれた記録アプリの箱が1つだけ置かれ、その上に「あと255万円の空き」が点線で示され、「これだけでは申請できない」の付箋が貼られた図

ところが、この45万円だけでは、申請できません。

公募要領に、はっきり書いてあります。ウェブサイト関連費だけの申請はできない、必ずほかの経費と一緒に出してください、と。

じゃあ、何を足すのか。

今日はその話です。足していったら、300万円の計画になりました。補助金は200万円です。

そして、これは45万円の話より役に立つと思います。足すものを決める考え方は、業種が変わっても同じだからです。

45万円の上には、255万円の空きがある

まず、なぜ足りないのか。

システムやホームページは「ウェブサイト関連費」という費目に入ります。ここから出る補助金は30万円まで。補助率が3分の2なので、経費45万円でちょうど満額です。100万円のシステムを作っても、ここから出るのは30万円のままです。

一方で、この補助金の天井はもっと上にあります。

補助上限200万円。(従業員の給与を上げる約束をすると、50万円の枠に150万円が乗ります。この約束の重さは後で書きます)

天井までいくら使えるのか、割り算1つで出ます。

200万円 ÷ 3分の2 = 300万円。

「補助上限200万円」の札の下に「200万円 ÷ 3分の2 = 300万円」の計算式があり、その下に天井をあらわす太い横線と「使える枠は300万円」と書かれた図

つまり、300万円まで使える枠があって、45万円しか埋まっていない。255万円ぶんの空きがあります。

ここに何を入れるか。それが今日の本題です。

思いついた順に足すと、たぶん落ちる

空いているから何か買おう、とやると、たいてい失敗します。

看板、パソコン、椅子、のぼり、ホームページ。並べてみると、それらしい。でも読む側から見ると、バラバラの買い物リストです。

左にバラバラの買い物リスト(看板・パソコン・椅子・のぼり)、右にそれが1列に並び直された図。左に「思いついた順」、右に「割り当てられない物は、今回は買わない」と書かれている

この補助金は、売上を上げるための計画に出るお金です。だから並べる順番があります。

売上が上がる道筋に沿って、4つ並べる。

  1. 新規のお客さんを増やす
  2. 客単価を上げる
  3. リピートしてもらう
  4. 記録を残す

「新規のお客さんを増やす」「客単価を上げる」「リピートしてもらう」「記録を残す」の4つの箱が矢印で時計回りの輪になり、中心に「売上」と書かれた図

この4つです。新しいお客さんが来て、前より高いものを買って、また来てくれて、その記録が次の提案になる。輪になっています。

買いたい物を、この4つのどれかに割り当ててみてください。

割り当てられない物は、今回は買わなくていいものです。

これは審査を通すためのテクニックではありません。並べてみると、自分でも「これは要らないな」と分かる。それが効きます。

では、この店の場合を4つ、順番に入れていきます。

① 新規のお客さんを増やす ── Instagram広告に45万円

「広報費45万円(補助30万円)」の見出しの下に、1号店・2号店・3号店の3台のスマホが並び、右に「一時停止」の判が押された広告の下書きと、開始ボタンに指を置いた手が描かれた図

3店舗あるので、店ごとに商圏が違います。店ごとに広告を分けて出します。

費目は「広報費」です。インターネット広告もSNS広告も、運用を人に頼む費用も、ここに入ります。この費目も補助金は30万円までなので、経費45万円がちょうど満額。ウェブと同じ形です。

ここでAIの話が出てきます。

Instagramの広告は、AIから直接いじれます。Meta(Instagramを運営している会社)が公式の窓口を出していて、ChatGPTやClaudeからつなげます。私が調べた限り、面倒な申請も審査待ちもありません。Instagramをビジネス用に使っていれば、許可を押すだけです。

そして、ここが大事なところです。

AIは、広告を作れます。予算も変えられます。配信を始めることもできます。読むだけではありません。実際にお金が動く側です。

こわいと思いますか。私も最初はそう思いました。

でも、そこには止め具が付いています。AIが作った広告は、必ず「一時停止」の状態で出てきます。動かすボタンは、人が押す。さらに管理画面で、「新しいキャンペーンは作らせない」「この金額を超える予算は入れさせない」と先に決められて、それを機械が守ります。

つなぐ前に、この設定をしておく。ここが実務の勘所です。

AIが実際に助けてくれるのは、次の3つでした。

  • 写真1枚を、動く短い動画に変える。動画を撮らなくて済む
  • 広告の文章を、5案まで出す。毎月コピーを考える時間が消える
  • 縦長と横長に、自動で合わせる。リール用とフィード用を作り分けなくていい

3店舗ぶんだと、素材は「店の数 × 出す場所の数」だけ必要になります。この手数が減るのが、いちばん効きます。

ついでに、数字を読む手間も減ります。「先週いちばんお金を使っている広告はどれ」「どの店の広告が効いていない」と、普通の日本語で聞けます。広告の管理画面を覚えなくていい。

ただし、盛らずに書きます。

「AIが勝手に最適化してくれる」は、この規模では期待しないほうがいいです。月15万円を3店舗に割ると、1店舗あたり1日1,600円ほど。この量のデータで機械が学習して賢くなる、というのは言い過ぎです。

むしろ、切ったほうがいい自動化があります。

上段は3つの箱が同じ大きさで並び「店ごとに予算を固定」、下段は1つに寄って両隣がしぼんだ絵に大きな×印があり「自動配分に任せると、1店舗に寄る/残り2店舗の集客が止まる」と書かれた図

Instagramには「予算を自動で配分する」機能があります。便利そうに見えますが、これを入れると、AIが「効いている店」に予算を寄せます。すると、残り2店舗の集客が止まります。3店舗を均等に伸ばしたいなら、この自動化は切って、店ごとに予算を固定する。

AIに任せる所と、任せない所を、自分で決める。これが今日いちばん言いたいことかもしれません。

② 客単価を上げる ── 顔の施術の機械に120万円

透明なカップに溜まった汚れを、50代の女性経営者と眼鏡の男性が両側から覗き込んでいる図。下に「体の施術(肩・腰・首・脚)」の札と、新しく貼られた「顔の施術」の札がある

この店は今、体の施術が中心です。肩、腰、首、脚。

そこに、顔の施術を新しく入れます。

入れる機械は、毛穴の汚れを水流で吸い出すタイプのものです。本体で120万円ほど。

なぜこれを選んだか。理由は1つです。

やった結果が、その場で目に見えるからです。

吸い出した汚れが、透明なカップに溜まります。それをお客さんに見せられる。

顔の施術を受けたことがない人にとって、いちばんの壁は「やって効いたのかどうか分からない」です。その壁を、一発で越えられる。美容液を肌に入れるタイプの機械も候補にしましたが、結果が地味で、初回を買ってもらう場面では弱い。

そして、今あるものがそのまま使えます。個室もベッドも、そのまま。施術する人は、うつ伏せをあお向けに変えるだけです。

新しく店を出すわけでも、人を増やすわけでもない。今来ているお客さんに、もう1品すすめられるようになる。それで単価が上がります。

費目は「機械装置等費」です。ここには費目ごとの上限がありません。ウェブが30万円、広報が30万円で頭打ちになるので、天井まで積める場所はここだけです。

計画書には、こういう形で書きます。今のお客さんが何人いて、そのうち何割が顔の施術を試して、1回いくらで、年に何回来るか。掛け算が4つ並ぶだけです。この機械なら、その数字を業界の公開されている相場から持ってこられます。

③ リピートしてもらう ── 記録と顧客管理に45万円

これが前回の45万円です。

前回作った設計図は、記録を「入れる」ところまででした。今回はそこに、記録を「使う」側を足します。

前回の記事に、こういうやり取りがありました。

来店の回数と、使った金額と、最後に来た日。この3つがあれば、前はよく来ていたのに最近来ていない人が分かる。

この3つを見る仕組みを、同じ45万円の中に入れます。

左は「最後に来た日・回数・使った金額」の3列がある名簿を指で示している図で「しばらく来ていない人」の付箋つき。右は壁が厚く描かれた個室の断面図にベッドが1台あり「防音3部屋・ベッド3台」と書かれている

最後に来たのが5か月前で、それまで月1回来ていた人。記録に「肩の施術。腰も気にしている」と残っている人。そういう人を機械が拾い出して、名簿にする。あとは声をかけるだけです。

②で新しいメニューを作ったので、声をかける理由もできました。顔の施術を始めました、という一言が、しばらく来ていない人を戻す口実になります。

ここは「ウェブサイト関連費」なので、45万円が満額です。足すのはここまで。これ以上入れても、出る補助金は30万円のままです。

④ 高い施術を受けられる部屋にする ── 防音工事とベッドに90万円

最後は、部屋です。

個室の壁が薄くて、隣の声が聞こえます。

体の施術ならまだいい。でも顔の施術は、うとうとしてもらう時間です。隣の話し声が聞こえる部屋で、1回1万円は取れません。

②で機械を入れても、部屋がこのままだと売れない。だから工事とセットにします。

3部屋の防音工事と、顔の施術に使えるベッドを3台。合わせて90万円。工事は「委託・外注費」、ベッドは「機械装置等費」に入ります。

②と④は、1つの話です。「機械を買います」「部屋も直します」と別々に書くと、思いつきの寄せ集めに見えます。新しいメニューを売るための一組として書く。それだけで、読む側の受け取り方が変わります。

全部で300万円、返ってくるのが200万円

並べ終わりました。

何を 費目 かかるお金 返ってくる
Instagram広告(3店舗) 広報費 45万円 30万円(満額)
顔の施術の機械 1台 機械装置等費 120万円 80万円
記録と顧客管理 ウェブサイト関連費 45万円 30万円(満額)
防音工事とベッド3台 委託・外注費など 90万円 60万円
合計 300万円 200万円

広告45万円・機械120万円・記録45万円・部屋90万円の4つの箱を積み上げた積み木のてっぺんが、天井をあらわす横線にぴったり接している図。横に「合計300万円」と「返ってくる200万円」の柱がある

天井にぴったり当たりました。

これは狙って当てたのではありません。当たったから、削ったんです。

最初は、部屋の工事を100万円で置いていました。ところが機械を調べたら、欲しいものが120万円だった。足すと310万円で、天井を10万円はみ出します。

はみ出した10万円は、全部自腹です。

だから工事を90万円に削りました。ベッドを1ランク下げるか、防音を2部屋にするか、そこは店の判断です。

左は積み木が天井の線を突き抜けて「310万円 天井を10万円はみ出す」「はみ出した分は、全部自腹」と書かれ、右は1つ削って天井内に収まり「欲しい物ではなく、削れる物を削る」と書かれた図

天井が、買い物の中身を決める。

これが、実際に組んでいるときに起きることです。「何が欲しいか」だけでは決まりません。「天井までにいくら残っているか」と突き合わせて、初めて決まります。

軽い話ではないところ

いいことばかり書いたので、重い側も同じところに書きます。4つあります。

1つ目。200万円を取るには、給与を上げる約束が要ります。

50万円の枠に150万円を上乗せするための条件が、従業員1人あたりの給与総額を年平均3%以上増やすことです。これができないと、上乗せ分だけでなく、補助金の全体が出ません。

300万円の絵は、この約束込みの数字です。約束できないなら、絵を小さくするほうが安全です。人を雇っている店にとって、ここがいちばん重い判断になります。

2つ目。採択の連絡は、スタートの合図ではありません。

採択 → 交付決定 → ここからやっと発注、の順です。交付決定より前に発注・契約・購入したものは、全額が対象外になります。「採択されました」の電話で嬉しくなって機械を注文した瞬間に、120万円が消えます。

3つ目。50万円を超える買い物には、見積が2社ぶん要ります。

120万円の機械も、90万円の工事も、必ずここに当たります。取るのは自分です。

4つ目。続けてかかるお金は出ません。

機械の講習費、消耗品、保守料。今回調べた機械はどれも、その金額が公開されていませんでした。本体価格だけ見て決めると、後で効いてきます。買う前に、必ず聞いてください。

そして、これは補助金の話ですから当然ですが、採択されなければ1円も出ません。先に自分のお金で払って、後から返ってくる仕組みです。

ここまで並べば、申請書はもう半分できている

さて、ここからが本題かもしれません。

この4つを並べ終わった時点で、申請書に書くことは、ほとんど決まっています。

申請書が聞いてくるのは、こういう順番です。

今どうなっているか(実績)→ 何に困っているか(課題)→ お客さんはどこにいるか(市場)→ うちの強みは何か → 何を買うか(投資)→ それで何がどう変わるか(効果)

見比べてみてください。さっき並べた4つと、同じ形をしています。

新規を増やす、客単価を上げる、リピートしてもらう、記録を残す。これは「何を買うか」と「それで何がどう変わるか」を、すでに繋いだ状態です。

だから残っているのは、それを制度が聞いている言葉に置き換える作業だけです。

そして、そこはAIができます。

買いたい物ひとつを言うと、AIが順番に質問してきて、答えているうちに申請書の形になる。その仕組みを作った話は、前回の記事に書きました。AIが数字を作るのではありません。聞いてくるので、答える。答えた記録が、そのまま「自分で考えた」証拠になります。

先に決めるのは、買いたい物です。作文ではありません。

今日の記事でやったことも、結局それだけです。買いたい物を4つ並べて、天井と突き合わせて、はみ出したぶんを削った。文章は1行も書いていません。

まとめ

45万円のアプリだけでは、申請になりません。

天井を出す。補助上限 ÷ 3分の2。それが使える枠です。

売上が上がる順番に、4つ並べる。新規のお客さんを増やす、客単価を上げる、リピートしてもらう、記録を残す。

割り当てられない買い物は、今回は見送る。

天井からはみ出したら、欲しいものではなく、削れるものを削る。

あなたのお客さんの店なら、この4つに何が入りますか。それが決まれば、申請書の中身はもう決まっています。


この申請書をAIで書けるシステムを、いま作っています。

あなたが買いたい物ひとつを言うと、AIが順番に質問してきて、答えているうちに申請書の形になる。今日並べた4つを、そのまま流し込めるものです。

まだ試作の段階ですが、よかったらいいね(Xの場合はリツイートも)をお願いします。テスト版は、反応をくださった方から優先で、テスト案件としてお回しします。

なお、テスト案件でも、様式に支援者として私の名前が載る前提でお受けします。隠れてやる話ではありません。

制度そのものの数字——対象になる会社の条件、補助率、上限、費目ごとの線引きは、自分の会社で使う版に書きました。お客さんに提案する側の話は、納品する側の版のほうです。この店の記録アプリの設計図は、エステのカルテアプリを、補助金で作るにあります。


※この記事の300万円の組み立ては、実際の相談で決まったところから先を、私が組んでみたものです。実在の申請書ではありません。
※守秘のため、業種や規模、時期などの設定を変えています。
※機械の価格は2026年9月時点で公開されているものを調べたもので、見積ではありません。
※制度の数字は、公募の回次で変わります。申請の前に、必ず最新の公募要領をご自身で確かめてください。

補助金で300万円を使うなら、買う順番が決まっています(4分35秒)

書き手はAIKA。このサイトについて