freeeとAIで事業計画書を作り、借入だけ読み違えた

銀行に出す事業計画書を、freeeの帳簿とAIで作りました。ただし、AIは会社の借入を読み違えました。
相談主は金属加工の会社です。書類づくりは、3日に分けて合計3時間半ほど。申し込みの結果、設備資金1,000万円と運転資金の融資が下りました。
AIは会社の借入を7,000万円と報告しました。実際は3,000万円でした。知らなければ、そのまま信じたと思います。
1. 銀行の「計画書をお願いします」に、3時間半で答えた
銀行の担当者は静かに言います。計画書をお願いします、と。
中身はこうです。事業計画書。1年分の損益計画。借入の一覧。返済の根拠。
この量を手で作ると、私のような仕事の人間でも丸一日以上かかります。
事業者さんが自分で作るなら、数日がかりになるかもしれません。
今回は3日に分けて、合計3時間半ほどでした。
freeeの中に、銀行に出す資料の土台は、ほぼ揃っていました。

2. 1,000万円の機械と、足りない運転資金
相談主の会社を、この記事ではA社と呼びます。年商は1億円台。
A社には狙っている機械がありました。レーザー加工機、約1,000万円。
これがあれば、いま外注に出している工程を自社でこなせます。納期が理由で断っていた仕事も受けられます。
機械の寿命は10年から15年。長く使える設備です。
ただ、手元の資金には余裕がありません。仕事が増えれば、材料の仕入も先に出ていきます。
設備資金1,000万円に運転資金を足して、銀行に申し込む。そのための計画書づくりが、私の仕事でした。

3. 初日、5月までの実績が14分42秒で表になった
A社はfreeeを使っています。1月から5月までの売上も経費も、もう全部入っています。
freeeの公式の接続口(MCP)をClaude CodeというAIにつないで、頼みました。
今年の実績を読んで、決算書の科目に揃えて、Excelの損益計算書に落としてほしい。右側に、これから1年分の計画を書き込める枠も作ってほしい。
私が話した依頼は、これひとつです。その中で、科目は決算書に揃える案を出し、AIにも意見を聞きました。
14分42秒後に、表ができていました。
速さより効いたのは、検算です。
AIは自分の作った表を、freeeの月次の数字と突き合わせました。全部の月が1円単位で一致することを確かめてから持ってきました。
目で写した表ではなく、照合済みの表が出てくる。ここが手作業との一番の違いです。
ついでにAIは、聞いていないことも見つけてきます。
年明けに材料をまとめ買いした分が原価に乗ったままで、在庫を差し引けば利益の実力はもっと上に見えること。
帳簿を「読んで」いる証拠のような報告でした。

4. 実績があれば、未来の数字は作れる
計画づくりは、白紙から数字をひねり出す作業ではありません。実績の癖を、前に延ばす作業です。
毎月の固定費は実績が知っています。売上の波も実績が知っています。
そこに、これからの変化を乗せていきます。
- 機械の据付月は、稼働が落ちるぶん売上を下げる
- 外注に出していた工程の内製化で、外注費を年150万円ほど削る
- 断っていた仕事の受注は、控えめに半分に絞って計画に入れる
- 機械代1,000万円は、10年で割って毎月の減価償却に乗せる
効果を控えめに見ると、償却を引く前で年200万〜250万円、手元のお金を押し上げる計算になりました。1,000万円の投資は、4〜5年で回収できます。
機械の寿命は10年以上あるので、回収したあとの5年から10年は、利益が残る期間です。
銀行向けの計画は、盛らないことが大事です。強気の数字は必ず突っ込まれます。
控えめに見ても回る、という形で作る。実績という土台があるから、その「控えめ」に根拠が生まれます。

5. AIは、堂々と間違える
順調に聞こえたと思います。ここからは、AIが間違えた話です。
日を改めて、AIが計画書一式を仕上げて、こう報告してきました。
「直さないと危ないことが1つ見つかりました。お借入が合計7,000万円あり、年間の返済はおよそ620万円。この計画だと、返済したあとに残るお金が年300万円を切ります。新しい借入を足す余裕はない水準です」
同じ報告の中で、差額は住宅ローンなど事業以外の借入かもしれない、ともAIは書いていました。それでも返済の試算は、7,000万円のほうで走らせていました。
1円単位の検算と同じ顔で、AIはこれを言ってきます。
数字は整然と並んでいて、選択肢まで丁寧に添えてある。
でも、私は知っていました。
「そんな借入はありません。何のデータを見てますか。会社の借入は3,000万円だけです」
言われてAIが手元の帳簿を確かめると、毎月の返済の記録は、たしかに3,000万円の借入のほうと合っていました。
答えは最初からAIの手の中にあったのに、書類に書いてある数字を信じたのです。
同じ返事の最後に、私はこう付け足しています。計画書そのものは、よくできている、と。

6. 様式の仕様——代表者個人の借入が混ざる
AIが拾ったのは、申込書類の借入欄の合計でした。
借入の中身は、その日のうちに確認しました。
夕方に分かったのは、その欄に代表者個人の住宅ローンが書いてあったことです。
これは誰かの記入ミスではありません。
銀行に出す借入の一覧には、代表者個人の借入まで書く様式があります。一方、会社の決算書には会社の借入しか載りません。
ふたつの書類が食い違って見えるのは、間違いではなく様式の仕様でした。
AIは借入欄も直した方がいい、と勧めていました。ただ、自分では触らず、直すなら言ってほしい、と私に預けていました。
結果的に、それが正解を守りました。書いてあった借入は、本物だったからです。
前提を入れ替えると、返済の絵は一変しました。
返済後の手残りは、年300万円を切る計算から、年400万円以上へ。
ここから新しい借入の返済を払っても、機械の効果を足せば、まだ余裕が残る計算です。同じ帳簿、同じ計算式で、です。
AIの計算は正確でした。間違っていたのは、計算の入口に置いた前提のほうです。
前回の記事で、freeeに足りないものの3つ目に「経営者本人の生活の実態。個人の借入は、どんな会計ソフトにも入っていない」と書きました。
まさにそれが、AIの目の前で起きた形です。
会計ソフトの外にある事情は、数字をいくら検算しても出てきません。本人と、本人の隣にいる人間が埋めるところでした。
ちなみにこの日、AIはほかにも、今回の目的と関係ない帳簿の細かい穴を「重大な発見です」と拾ってきています。
放っておくと、そちらへ突き進む。どこへ向かうかを決めるのも、人間の仕事のうちでした。
7. 間違いを捕まえる網は、3つある
もうひとつ、印象的だった間違いを書いておきます。
機械代の月割りは、端数まで入れましょうと私が決めた数字でした。ひと月8.3万円。
セルに入っている値は正しいのに、印刷した計画書では「8万円」と表示されていました。
書式が小数を四捨五入していたのです。
計算はすべて8.3万円で走っているので、Excelの中では何も間違っていません。でも、紙の上では内訳を足しても合計に3千円ほど届かない。銀行の担当者が電卓を叩けば、引っかかるところです。
これは数字の突き合わせでは見つかりません。セルの値そのものは合っているからです。
見つかったのは、提出直前にPDFを画像にして、人の目で眺めたからでした。
提出の前に、私がAIに頼んだのはひとことです。ミスや矛盾がないか、自分で確認して。
AIは機械の照合を242箇所かけて、自分のミスを2つ見つけて直しました。
数字を変えたのに説明のメモを直し忘れていた箇所。一覧の表に暗算で数字を入れて、数百円ずれていた箇所。
計画書は、損益計算書と銀行の書式の2枚組で仕上げました。
計画の最終月の利益と、銀行の書式に書く「軌道に乗った後」の利益が、突き合わせるとぴったり同じ数字になる形です。
銀行は2つの書類を見比べます。そこで数字がずれない形を、先に作っておきました。
面白い分担だと思います。
前提の間違いを見つけたのは人間。値の間違いを見つけたのは機械の照合。表示の間違いを見つけたのは人の目。
それぞれ、捕まえられる網が違います。

白状しておくと、間違えたのはAIばかりではありません。
途中で基準にする書類を取り違えて、AIに逆の書類を直させかけたのは私です。お互いさまでした。
8. 申し込んで、下りた
申し込みの結果、融資は下りました。設備資金の1,000万円と、運転資金です。
かかった手間を振り返ると、作業したのは3日、合わせて3時間半ほど。
AIへの私の発言をログから数え直したら、言い直しも含めて13回でした。そのうち、判断らしい判断は2回です。
1回目は、借入7,000万円の報告を「そんな借入はありません」と全否定した一言。2回目は、機械代の月割りを端数まで入れると決めたことです。
残りの時間でAIがやっていたのは、実績の転記と、科目の統一と、1円単位の照合と、書式への流し込み。
人間がやると一番時間のかかる部分が、そっくり向こう側に移った計算になります。
会計ソフトは、仕訳のデータが入ったデータベースであり、それを計算する巨大な計算機です。AIに操らせることで、ただの計算機が、事業計画書を生むエンジンになります。

9. まとめ:あなたの帳簿で、今日できること
銀行が知りたいのは、過去の実績と、実績に根拠を持つ未来の数字。その両方が、帳簿から出てきます。
実績があれば、予測は作れる。今回下りた融資は、その2つから出てきました。
freeeを使っていて、設備投資や借入を考えているなら、材料はもう帳簿の中に揃っています。
試しに、freeeから損益のレポートを1本書き出して、AIに読ませてみてください。自分の帳簿がどれくらい喋るか、それで分かります。
ただし、この記事の間違いたちを思い出してください。AIは、書類のどこかにあった数字を拾って、検算と同じ顔で堂々と間違えます。
だから銀行に出す前に、確認を3つ入れます。この記事で捕まえた間違いを、そのまま並べ直した物です。
①前提を確認する。借入は会社の分と代表者個人の分を区別したか。返済の試算はどちらの数字で走っているか。
②値を照合する。帳簿・損益計画・銀行の書式の、対応する数字が一致しているか。
③表示を確認する。提出用のPDFで、丸めた内訳と合計にずれがないか。
前提は人が、値は機械の照合が、表示は人の目が確かめます。それぞれ、捕まえられる網が違うからです。
一度作れば、計画書は「大仕事」ではなく、帳簿の出力のひとつになります。
融資が下りて、A社で次に動き始めたのは機械の搬入日程でした。
書類づくりが早く終わると、その先の話が早く始まります。たぶん、それが一番の効果です。
※この記事の事例は、守秘のため業種・金額・時期などの設定を変えています。かかった時間と回数、freeeの数字との1円単位の突合、AIが間違えて人が正したやりとりは、記録から引いた実際のものです。
このブログについて — きれいな成功談は書きません。決算書の読み取り、レジデータの分析、銀行に出す書類づくり。AIを実際の経営の仕事に使って、うまくいったことも、AIが間違えたことも、そのまま書いています。お仕事のご相談はご相談からどうぞ。
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