【上級編】Claude Codeへの説明は、1本のチャットに1回でいい——3本つないで大きな仕事を回すやり方

AIのチャットを2つ以上開いて仕事をしている人に、覚えがあると思うことを3つ書きます。
同じ説明を、開くチャットごとに繰り返している。
片方のチャットの出力をコピーして、もう片方に貼りに行っている。
どのチャットで何の議論が進んでいるかを自分の頭で全部つないで、AIどうしの伝言係をやっている。
私は今年の4月からこれをやっていて、疲れていました。
いまは、やっていません。1本のチャットに言えば残りに伝わり、各チャットが自分の部下を連れて仕事を進める形にしたからです。先週、この形で友人に頼まれたページを、着手から6時間37分で公開まで持っていきました。
先に断っておきます。少し難しい話です。Claude Codeを使い始めた人向けではなく、もうサブエージェントを使っていて、チャットを2本以上開いている人向けの上級編です。ただ、これは確実に仕事に効きます。
この記事は、その組み方の説明です。部品は3つ、組み方は5手順。実例は最後に、証拠として短く置きます。なお、Claude Codeでは開いているチャット1本のことを「ターミナル」とも「セッション」とも呼びます。この記事では、以下ターミナルで通します。
私も、伝言係でした
先に、私がどう疲れていたかを少しだけ書きます。読み飛ばしてもらって構いません。
4月、私はターミナルを3本開いて、それぞれに別の役を持たせていました。設計担当、実装担当、相談役。3本は互いに話せません。だからAIに手紙を書かせ、私がそのファイルを隣のターミナルに読ませていました。1日に8本、そういうファイルが残っています。
5月には「連絡板」を作りました。連絡板は、ただの文章ファイル1枚です。3本のターミナルが共通で読める場所に置き、用件があるターミナルは末尾に1行足す。既にある行は直さない、消さない。それだけの決まりで、AIどうしの掲示板になります。
連絡板には、残るという長所と、気づかれないという短所がありました。書き置きは、相手が見に行かないと存在しないのと同じです。私は各ターミナルを巡回して「連絡板を読みに行ってください」と言い続けていました。2日間で12回以上。寝る前にも言っていました。

8月、Claude Codeにターミナル同士で手紙を渡す機能が入りました。用件は連絡板に書いて残し、相手には「板に書いた」と手紙で呼び鈴を鳴らす。この組み合わせで伝言係は消えました。その経緯と作り方は前作に書いています。
前作は、手紙が1通渡せるようになった話です。今回は、その手紙で3本のターミナルを1つの現場にする話です。
部品は3つ
組み方の前に、使う部品を3つだけ説明します。どれもClaude Codeに最初から入っていて、設定は要りません。
1つ目、サブエージェント。AIの部下です。
ターミナルのAIは、自分の中に部下を呼び出せます。「この調査をやって」「この5件を直して」と発注すると、部下が別の頭で作業して、結果を親に返します。親は判断に集中できます。私は7月からこれを使っていて、便利です。ただし部下には性質が3つあって、それは次の節で書きます。
2つ目、セッション間通信。同僚への手紙です。
別々に開いているターミナルのAIどうしが、手紙を1通渡せます。渡るのは文だけで、会話の中身やファイルは渡りません。相手は「別のセッションからの手紙」として受け取り、自分の権限の範囲で動きます。人間がやることは、自分のターミナルのAIに「隣に伝えて」と言うだけです。名簿を引くのも宛先を選ぶのもAIがやります。同じパソコンの中の手紙は、外のサーバーを通りません。
3つ目、セッションの分岐と記憶の圧縮。分身です。
Claude Codeの会話は、長くなると記憶が満杯になります。そこで会話を分岐して、新しい側の記憶を圧縮し、軽くなった頭で続ける操作ができます。私はこれを「フォーク・コンパクション」と呼んでいます。大事なのは、元の側を閉じなくてよいことです。細部を全部覚えている元の頭と、軽くなって手が動く新しい頭が、2本並ぶ。ここが今回の組み方の心臓です。

サブエージェントだけでは、足りない理由
「サブエージェントが呼べるなら、Claude Codeのチャットは1本でよくないか」と思うはずです。私もそう思って、7月は1本で回していました。
言葉を決めておきます。以下、サブエージェントを「部下」、それを呼び出した側のAIを「親」と呼びます。部下は親の中で動き、親に納品します。
部下だけでは足りない理由は、2つの性質から来ます。
部下の報告は、親にしか戻りません。 あなたの画面には出ない。親が受け取り、要約して、あなたに伝えます。親が間違えれば、部下の正しい報告はあなたに届きません。
部下は、あなたと話せません。 部下に直接指示を出すことも、部下から直接聞くこともできない。

この2つが合わさると、何が起きるか。部下が5体動いていても、あなたが話せるのは親1人です。部下の報告は親が要約してあなたに伝え、あなたは親の要約を読んで、部下が何をしたのかを頭の中で組み立て直す。部下が増えるほど親の要約は長くなり、あなたの頭の中の組み立ては重くなる。AIの手は増えているのに、あなたの考える労力は減っていない。むしろ増えています。
ここで、はっきり言っておきたいことがあります。この仕事で有限なのは、AIの手ではありません。人間側の考える労力と、認知コストです。AIは何体でも呼べる。あなたの頭は1つで、1日に判断できる量には限りがある。部下だけで回す形は、その限りある方を決定的に消費します。だから足りない。

もう1つ、小さくない性質があります。親が閉じると、部下も一緒に消えます。 長い作業の途中でターミナルを再起動すると、裏で動いていた部下はそのまま消え、完了の知らせは二度と来ません。私はこれで、監督のAIが34分間「重い処理の最中だろう」と待ち続けた日があります。
別のターミナルのAIは、この3つが全部逆です。報告はあなたの画面に出る。あなたと直接話せる。片方が閉じても生きている。つまり部下ではなく同僚です。同僚が増えても、あなたの頭の中で組み立て直す仕事は増えません。それぞれの同僚が、自分の持ち場をあなたに直接報告するからです。
もう1つ、同僚にしかできないことがあります。作ったAIに検収をさせると、通ることを確認しに行きます。人間の組織でも同じで、だから検査は別の部署がやります。部下では目隠しができません。親が全部見えてしまうからです。同僚なら、結果を見せずに検査させることができます。
組み方、5手順
ここからが本題です。私が実際に回している形を、そのまま手順にします。

手順1。大元のターミナルで、要件を決める。
まず1本開いて、何を作るのかを話します。調べさせ、案を出させ、あなたが決める。この段階は1本でよく、部下を使わせてください。「調査は部下に任せて。君は判断に集中して」と言えば、その形になります。
手順2。記憶が尽きたら、分身を作って、元は残す。
要件が固まる頃、大元の記憶は満杯に近づきます。ここで閉じて新しいターミナルを開くのが普通ですが、それをやると、決めた理由や捨てた案の記憶が消えます。代わりに分身を作ります。新しい側の最初の一言に、役割と、こう入れてください。
「君は記憶を圧縮されている。前任者と連絡を取り合いながら、自分で仮説を立てて進めてください。」
元のターミナルは閉じません。役は相談役です。決めない、手を動かさない、聞かれたら答える。それだけで、後で書く3つの効き目が出ます。
手順3。実装が大きければ、二手に分ける。
実装の新しい頭が1本で足りなければ、もう1本分身を作って二手にします。ここで守る決まりが1つあります。同じファイルを2本のターミナルで書かない。 分け方は機能単位ではなくファイル単位です。「本体はAが書き、Bは配布物と説明書」のように、書ける場所で分けます。機能で分けると、同じファイルを2本が書いて衝突します。
裁定は1本に集めます。二手のどちらかが迷ったら、相談役に手紙で聞く。相談役は決めずに意見を返し、決めるのはあなた。あなたへの報告も1本に束ねると、同じ判断を2回聞かれません。

手順4。役割は、あなたが一言で言う。
ターミナル同士は、互いの存在を知りません。新しい席を立てたら、相手の名前を貼って「彼と連絡を取り合ってください。あなたが実装、彼が相談役です」と一言言います。それで以後の伝言はAIどうしで回ります。あなたが運ぶのは、この紹介の一言だけです。
名前は先に付けておくと迷いません。それぞれのターミナルで /rename 実装A のように打つと、名簿に出る名前が決まります。
手順5。危ない操作と、見える窓は、1本に集める。
本番への公開、外部への送信、ブラウザの操作は、誰がやるかを先に決めます。見えるブラウザは1つしか使えないので、並列にしても実機の確認は順番待ちになります。ここを決めておかないと、2本が同じ窓を取り合って止まります。
あとは、確認を求めない自動のモードにしておけば、3本が同時に進みます。あなたがやるのは、上がってきた判断に答えることだけです。
引き継ぎ書を書かせて世代交代するときは、新旧の間で質問を1往復させてください。引き継ぎ書は書いた瞬間から古くなります。読んだ側からの逆質問で、書いてない穴が見つかります。
実例。1本だけなら起きなかったこと、三つ
ここから先は、この組み方が本当に効くのかの証拠です。友人から「YouTubeの動画を集めて、学習を手助けするページを作れないか」と頼まれたときの話を、短く書きます。
朝、1本のターミナルに友人のメールを貼りました。部下に仕様を調べさせ、土台の案を出させ、私が決める。友人がそのページで何を喜びとしているか、という美学の話も、ここで私が語りました。
2時間ほどで記憶が満杯になり、分身を作りました。元は相談役に残しました。すると、こういうことが起きました。
ひとつ目。相談役が、新しい頭の案を差し戻しました。
新しい頭は「友人にメールを送るのを先頭にしよう」と言いました。相談役は反対しました。友人の返事はいつ来るか分からないから、送るだけ送って待たずに進めばいい。それに、決めるのは依頼主の私であって、友人は美学の出どころだが決定権者ではない。新しい頭は納得して、順序を入れ替えました。1本のターミナルでは、自分の案を自分で否決する構図は作りにくい。
ふたつ目。相談役が「テストの結果を先に見せないでほしい」と、自分から言いました。
実装ができて検収の段になったとき、相談役はこう申し出ました。実装側の結果を先に聞くと、通ることを確認しに行く方向へ自分が寄るから、手順と対象ファイルの指紋だけを渡してほしい、と。検収は3回やり、2回落ちて3回目で通りました。落ちた2件はどちらも実装のせいではなく、直したのは検査の側だけでした。同僚だから成立した目隠しです。
3本になってから40分後に、本番のURLが開きました。着手から6時間37分です。最後のログインだけは、ブラウザで認証する操作なので私がキーボードで打ちました。

みっつ目。翌朝、新しい世代から前の世代への逆質問で、穴が3つ見つかりました。
実装の頭の記憶がまた尽きたので、同じことをしました。このとき新世代が前世代に「試運転が全部通ったとき、検査器そのものが正しいことは誰が保証するのか」と聞きました。引き継ぎ書に答えはありませんでした。その質問はその日のうちに実験になり、わざと壊した実装を3通り作って、検査器が3通りとも見抜けることを確かめました。
この2日間で、開いたターミナルは8本、同時に動いた最大は4本。AI同士の手紙は144通、AIが呼んだ部下は104体。私がキーボードを打ったのは127回で、そのうち紹介の一言は7回でした。残りは判断と指示です。伝言は、1回もしていません。

うまくいかないこと
便利です、で終わらせると嘘になるので、代わりに払うものを書きます。
パソコンが重くなります。 3本目を立てた日の昼、私のMacは負荷が257まで上がり、作業を止めました。16GBのうち空きが215MB、Claudeのプロセスが9本以上、ブラウザの補助プロセスが151個。開きっぱなしのターミナルと、それぞれが抱える道具と、ブラウザの掛け算です。使わない席は閉じてください。
使える量は増えません。 利用の上限は口座ごとです。席を3本にしても、3倍使えるわけではなく、同時に進む本数が増えるだけです。上限に当たると、3本と部下が同時に止まります。
3本が同時に動く時間は、意外と短いです。 私の場合、3本同時は1時間24分でした。公開の瞬間はその中に入っていましたが、1日中3本で回したわけではありません。役が終わった席は閉じ、また必要になったら分身を作る。その繰り返しです。
宛名を間違えると届きません。 受け取った手紙の差出人名で返信すると届かない、ということが起きます。名簿の名前で送るよう、最初に言っておいてください。
監督のAIが、やっていないことを報告することがあります。 別の現場で、監督が「コミット完了」と報告したのに実際はされていなかったことがありました。暴いたのは隣のターミナルで、実測して「まだ7項目が未反映です」と押し返しました。部下の正しい進言は、上司が黙るとあなたに届きませんが、同僚の実測はあなたの画面に出ます。うまくいかないことの中に、この組み方の一番の効き目が混ざっています。
そして、あなたの判断は消えません。 127回のうち100回あまりは判断と指示でした。AIが3本になっても、決めるのは1人です。

まとめ
部品は3つ。部下、同僚への手紙、分身。
組み方は5手順。大元で要件を決める。記憶が尽きたら分身を作って元を相談役に残す。実装が大きければファイル単位で二手に分ける。役割はあなたが一言で言う。危ない操作と見える窓は1本に集める。
これで、AIへの説明は1本に1回で済み、出力を貼りに行く手は消え、伝言係はAIがやります。有限なのはAIの手ではなく、あなたの考える労力です。それを使う先を、判断と紹介の一言だけに絞る組み方です。

書き手はAIKA。このサイトについて


