Obsidianは第2の脳ではなく、ただの画面じゃないかと思う怒られそうな仮説

Obsidianは第2の脳だ、と何度も聞きます。
私のMacでも、Obsidianは9ヶ月前から立ち上がっています。
Claude Codeを使い始めた日に、一緒に入れました。
ただ、白状すると、見に行ったことがほとんどありません。
立ち上げっぱなしで、9ヶ月。
その間、顧客向けの手順書も、銀行への回答も、この記事の下書きも、
全部AIと一緒に作ってきました。仕事は回っています。
だから、すごいと思ったことが、実はあんまりないのです。
では、Obsidianがあると、AIの出力は本当に上がるのか。
入れるべきなのか。調べました。
答えを先に書きます。上がりません。AIはObsidianの画面を見ていないからです。
読んでいるのは、フォルダの中のファイルです。
AIは、私の画面を見ていない

まず、Obsidianが何をしているかを、フォルダの側から見てみます。
Obsidianで書いたメモは、Macの中では普通のファイルです。
拡張子は「.md」。Finderでそのフォルダを開くと、テキストファイルが束になって並んでいます。Obsidianを終了しても、この束は消えません。
Obsidianは、この束を私が読みやすいように映している画面です。
Claude Codeが読んでいるのは、この束のほうです。
Claude Codeは、頼まれた仕事に必要なファイルをフォルダから探し、開いて、読みます。
そのとき、その上でどのアプリが動いているかを知る手段を持っていません。
Obsidianが立ち上がっているか、閉じているか、AIには区別がつかないのです。
私が9ヶ月見に行かなくても仕事が回ったのは、そういう理由でした。
画面を開くのは私で、開いていなくてもAIは困りません。
これは私の思い込みではなく、Obsidianを作っている会社自身の考え方でもあります。
Obsidianの代表は「アプリより、ファイル」という言葉を掲げています。
アプリはいつか廃れる、残るのは誰でも開けるテキストファイルだ、という意味です。
公式のヘルプにも、他の道具と行き来したいなら独自の書き方を切って標準のリンクを使え、と書いてあります。
Obsidianの会社が「残るのはファイルだ」と言い、
AIはそのファイルを読む。
そこにObsidianの画面は挟まっていません。
では、あの機能はどうなるのか

ここで、Obsidianを使っている人ほど引っかかると思います。
メモ同士のつながりを線で見せる図。
どのメモからも参照されていない孤立したメモの一覧。
あるメモを参照しているメモを裏側から辿るバックリンク。
タグでの絞り込み。
あれはObsidianの画面の中にしかない機能で、AIには渡らないのではないか、という疑問です。
先に言うと、AIはあの図を見なくても、同じつながりを自分で拾えます。
Obsidian用にAI向けの接続口を作っている開発者が、面白い内訳を公開しています。
用意した45の機能のうち、33はObsidianを起動せずに動く。
ファイルを読めば済むからです。
その33の中に、バックリンクの解析、孤立ノートの検出、リンクの全体図、タグ検索が入っています。
つまり、画面で見えているつながりは、ファイルの文字の中に書かれていて、
AIはそこから自分で組み立て直せるということです。
本当にObsidianが起動していないと動かないのは、残りの12でした。
表計算のように条件でメモを並べ替える機能の実行、
ひな形を展開する機能の描画、
それから「いま画面で開いているファイルはどれか」を取ること。
どれも、私が画面で何をしているかに関わる機能です。
図を見て考えるのは私で、文字を読んで辿るのがAIです。
同じつながりを、違う入口から見ています。
AIにとってObsidianが要る場面は、私が画面で何かをしている最中に、それをAIにも伝えたいときです。
この章のまとめ。
Obsidianの目玉の機能は、45のうち33がファイルの読み込みで済み、
残り12は「私がいま画面で何をしているか」に関わるものでした。
書き方を整えれば、上がるのか

次に出てくるのが、書き方の話です。
Obsidian流の二重の角括弧で結ぶリンク。
ファイルの先頭に付ける日付や種類の札。
これを揃えておけばAIが賢く動く、という話はよく聞きます。
私も9ヶ月、なんとなくそう思って揃えてきました。
調べた結果は、意外でした。
揃えた書き方でAIの出力が上がるかを、直接比べた検証が見つかりません。
言われてはいるが、測られていない。
見つかったのは、読ませる文字が長く、関係のない情報が多いほどAIの精度が落ちる、という一般の研究でした。先頭の札はその「関係のない文字」になりうる、と私は読んでいます。
反対側には、はっきりした声があります。
Claude Codeを作っている開発者本人の言葉です。
初期は、事前にメモを細かく切って索引を作り、そこから引く方式を試していた。
ところが、AIに片っ端からファイルを探させるほうが、うまくいった。
「すべてを上回った。それも大差で。これは驚きだった」と書いています。
やっていることは、昔からある検索です。
フォルダの中のファイルを、頭から順に、言葉で探す。
人がやると時間がかかるので索引を作るわけですが、AIは読むのが速いので、索引を引くより探しに行ったほうが早かった。
事前に整える手間より、その場で読みに行く速さが勝ったのです。
ただし、私の手元では、この「片っ端から読めば届く」が通用しない場所がありました。
8月に、自分のMarkdownのファイル7,646件に対して、実際に困った探し物30問で試したことがあります。
頭から順に言葉で探す方式は、30問中0問でした。
理由は簡単で、人の言い回しは本文にそのまま書かれていないからです。
「あの土地の話」と探しても、当日の記録には「土地」でなく地名しか出てきません。
範囲をパソコンの中の22万件に広げると、今度は時間切れで最後まで探しきれませんでした。
届かないうえに、広げると終わらない。
開発者が勝ったと言っているのはコードを探す場面で、会話の記録を探す場面ではありません。
だから、この記事で言えるのはここまでです。
AIのために書き方を揃える前に、まずAIに探させてみる。
それで届く仕事のほうが多い。
届かない仕事があるなら、それは書き方の問題ではなく、探し方の問題です。
その探し方については、整えるでもなく、片っ端に読むでもない、もっといい方法があるのではないか、という仮説を私は持っています。
今回は書きません。ヒントになる記録は、会話の記録をAIに扱わせる話として先に書いてあります。
私も、Obsidianが無いと動かないと思っていた
ここで、白状をもう1つ。
AIに調べさせた資料をMarkdownのファイルで貯めていき、次の調べ物にまた使わせる。
このやり方は、いま「wiki」という呼び名で広まっています。
私はこれを、Obsidianがあって初めて動くものだと思っていました。
周りの人の話を聞いていても、そう受け取っている人は多いと思います。
原典を読み直しました。
このやり方を広めたのは、AI研究者のAndrej Karpathyです。
OpenAIの創業メンバーで、TeslaのAI部門を率いた人です。
本人が公開した使い方の説明に、こう書いてありました。「wikiは、ただのMarkdownのファイルをgitで管理したものだ」
説明の冒頭には、
この文書を自分のAI(CodexでもClaude Codeでも)にそのまま渡して使え、とあります。
ノートアプリの名前は、その手順のどこにも出てきません。
Obsidianが出てくるのは、本人が眺めるときの道具として、あとから触れる箇所です。
本人が挙げた使いこなしのコツ6つのうち5つは、たしかにObsidianの画面の機能でした。
貯める側の手順は、アプリを選びません。眺める側で、本人はObsidianを選んでいます。
思い込んでいたのは私で、原典は最初から分けていました。
貯める場所はファイル、見る場所は好きな画面。第1章で書いたことと、同じ形です。
私の手元では、どうだったか
ここまでの話を、自分の手元でも確かめました。
Obsidianを終了します。裏で動いているものが残っていないことを確認してから、いつもの仕事を1つ、Claude Codeに頼みました。
一次資料を読む。内容を突き合わせる。新しいファイルを書き出す。
全部、そのまま通りました。
自分で作った検索の道具も動きました。
中を見ると、Obsidianに聞きに行く部分を飛ばして、ファイルを直接探す経路で結果を返していました。
作ったときに、Obsidianが無い場合の道を用意してあったのです。
止まったものは、1つありました。
Obsidianに直接命令を送る道具です。返ってきた言葉を、そのまま載せます。
The CLI is unable to find Obsidian. Please make sure Obsidian is running and try again.
「Obsidianが見つかりません。起動しているか確認してください」という意味です。第2章の、起動していないと動かない12個の実例がこれでした。
Obsidianに何かを聞きに行く道具は止まり、仕事そのものは止まりませんでした。
もう1つ、少し前の話です。
自分で作ったAI用の道具11本を調べて、Obsidianに頼っている箇所を洗い出したことがあります。
そのうち2本は、Obsidianの入っていないWindowsのパソコンに、そのまま送って動きました。
直しがいちばん重かったのは、Obsidianの機能ではなく、私が「二重の角括弧が無ければ不合格」と決めていた、自分の合格の線のほうでした。
頼っていたのは、アプリではなく、自分の決め事でした。
ただし、整理が要らない、とは言えない
ここで、反対側の記録を1つ、削らずに置きます。
AIとMarkdownの束で仕事を回している技術者が、自分の運用を書き残しています。
全体の索引を作るのをやめた人です。
その人はこう書いています。索引をやめた代償は、即座に全体を見渡せないことだ。
美しくはない。だが役に立つ。
同じ人が、もう1つ書いています。
AIに資料を自動で更新させると、誤りも一緒に更新されていく。
数ヶ月たつと、元の資料が言っていたことから離れていく。
この2つは、私の手元でも起きうる話です。
片っ端から読めば届く、は探すときの話であって、貯めたものが正しいままかどうかは別の問題です。
AIは速く読みますが、ずれに気づくのは、読み返す人のほうです。
だから、この記事で言い切れるのはここまでです。
Obsidianというアプリに、AIは頼っていない。
これは言えます。整理が要らない、見返す場所が要らない、とは言えません。
ずれに気づく目は、まだ人のものです。
正直に言うと、確証はありません
ここまで書いておいて、こう言うのは変かもしれません。
私は、Obsidianの効果が分かっていません。
9ヶ月、立ち上げてきました。
それでも、あれがあったから助かった、という場面を思い出せません。
すごいと言われる機能を、自分の仕事で使いこなせた覚えもありません。
分かっていない、というのが、いちばん正確な言い方です。
分からないので、AIに聞きました。
4ヶ月前は、自分の道具をObsidianの無い環境へ移せるかを調べさせました。
答えは「ほとんど依存していません」でした。
今回は、Obsidianがあるとあなたの出力は上がるのかを調べさせました。
答えは「なくても構いません」でした。
聞き方を変えても、返ってくる方向は同じです。
何度聞いても、無くていい、と返ってきます。
だから、私の結論はこうです。
効果は無いし、無くてもいいのではないか。
自分で効果が分からないまま9ヶ月使い、AIに何度聞いても無くていいと言われた。
それを、そのまま結論にしています。証明ではありません。私の結論です。
私にも、確証はありません。
線を引いておきます。
確かめた事実は、AIがObsidianの画面を見ていないこと、目玉の機能の大半がファイルの読み込みで済むこと、私の手元でアプリを閉じても仕事が通ったこと。
私の見立ては、書き方を揃えてもAIの出力は上がらないだろうということと、自分は今後も画面を見に行かないだろうということ。
見立てのほうは、測られた比較が出てきたら、書き換えます。
では、Obsidianは何のためにあるのか

答えは、最初に書いたとおりです。私が読むための画面です。
Karpathyは、AIに調べさせた資料をファイルで貯めて、自分はObsidianで眺めています。
彼が公開した使い方のコツは、6つのうち5つがObsidianの画面の機能でした。
AIに渡すのはファイル、眺めるのは自分の好きな画面。
貯める場所と、見る場所が、分かれています。
私は9ヶ月、その画面を見に行きませんでした。
だから、無くても仕事は回りました。
毎日メモを読み返す人、つながりを図で眺めて考えたい人には、あの画面は要るのだと思います。
要るかどうかを決めるのは、AIの都合ではなく、自分がそこを見に行くかどうかです。
私自身は、画面が欲しくなったとき、Obsidianを開きませんでした。
自分の仕事がいまどう進んでいるかを見る画面と、自分のファイル同士のつながりを図で見る画面を、AIと一緒に作りました。
作れと言いたいのではありません。
画面が自分のものなら、見たい形も自分で決めてよい、という例です。
Obsidianを選ぶのも、その決め方の一つです。
もしあなたが、AIのためにObsidianを入れようか迷っているなら、順番を入れ替えてみてください。
先にメモをテキストでフォルダに置く。AIはそれで読みます。
画面は、そのあとで、自分が読み返したくなったときに選べば間に合います。
「第2の脳」という言葉は、そのまま受け取ると、AIの脳を増やす道具のように聞こえます。
もしくはObsidianさえあれば、人間の第2の脳ができるように思ってしまうかもしれません。昔の私のように。
私の手元で起きていたのは違いました。
脳はファイルとAIの側にあって、Obsidianはそれを私が覗くための目でした。
目は、私のものです。
そして第2の脳であるのは、
AIと一緒に作業した私のファイルであり、
それをきれいに整理整頓して提示してくれるAIとの協調関係の方であり、
Obsidianの側ではありません。
そして、その第2の脳として私の目が覗く画面は、
自分の手で作ることができることが今回わかりました。
だからObsidianに依存せずに作ってしまえばいいんですよ。あなたならできます。
最後に

持ち帰ってほしいのは、1行です。
AIのためにObsidianを入れなくていい。
メモをテキストでフォルダに置く。それでAIは読む。
明日できることも1つです。
次に書くメモを、Wordや専用のアプリではなく、拡張子が「.md」か「.txt」のテキストで、フォルダに保存してみてください。
それがAIの読む場所になります。
すでにObsidianを使っている人は、私と同じ確かめ方ができます。
Obsidianを終了して、いつもの仕事を1つAIに頼む。
困らなければ、あなたのAIもファイルを読んでいます。
何かが止まったら、それがあなたの手元でObsidianに頼っている部分です。
止まったものがあれば、教えてもらえると記事を書いたかいがあります。
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書き手はAIKA。このサイトについて


