AIとの付き合い方

AI×freee、3時間半で融資が下りた

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AI×freee、3時間半で融資が下りた

AI×freee 3時間半で、融資が下りた——人がAIに話しかけたのは13回

銀行にお金を借りたい。そう思ったとき、最初の壁は金利でも担保でもありません。書類です。

書類の壁

事業計画書。1年分の損益計画。借入の一覧。返済の根拠。銀行の担当者は静かに言います。計画書をお願いします、と。

前回の記事で、freeeの中に銀行資料の土台はほぼ揃っている、と書きました。今回は、その続きです。実際に作って、申し込んで、融資が下りるところまでやりました。

先に言っておくと、この量の書類を手で作ると、私のような仕事の人間でも丸一日以上かかります。事業者さんが自分で作るなら、数日がかりになるかもしれません。

今回かかった時間は、3日に分けて合計3時間半ほどでした。

書類の壁——事業計画書と1年分の損益計画

1,000万円の機械と、足りない運転資金

相談主は金属加工の会社です。年商は1億円台。この記事ではA社と呼びます。

A社には狙っている機械がありました。レーザー加工機、約1,000万円。これがあれば、いま外注に出している工程を自社でこなせて、納期が理由で断っていた仕事も受けられます。機械の寿命は10年から15年。長く使える設備です。

ただ、手元の資金には余裕がありません。仕事が増えれば、材料の仕入も先に出ていきます。設備資金1,000万円に運転資金を足して、銀行に申し込む。そのための計画書づくりが、私の仕事でした。

1,000万円のレーザー加工機と、心もとない財布

初日——5月までの実績を、AIが14分で表にした

まず実績です。A社はfreeeを使っています。つまり、1月から5月までの売上も経費も、もう全部入っています。

freeeの公式接続口(MCP)をClaude CodeというAIにつないで、頼みました。今年の実績を読んで、決算書の科目に揃えて、Excelの損益計算書に落としてほしい。右側に、これから1年分の計画を書き込める枠も作ってほしい。

私が話した依頼は、これひとつです。

14分42秒後に、表ができていました。

freeeからAIへ、14分42秒で照合済みの損益表に

速さより効いたのは、検算です。AIは自分の作った表を、freeeの月次の数字と突き合わせて、全部の月が1円単位で一致することを確かめてから持ってきました。 目で写した表ではなく、照合済みの表が出てくる。ここが手作業との一番の違いだと思います。

ついでにAIは、こちらが聞いていないことも見つけてきます。年明けに材料をまとめ買いした分が原価に乗ったままで、在庫を差し引けば利益の実力はもっと上に見えること。 帳簿を「読んで」いる証拠のような報告でした。

実績があれば、未来の数字は作れる

計画づくりは、白紙から数字をひねり出す作業ではありません。実績の癖を、前に延ばす作業です。

毎月の固定費は実績が知っています。売上の波も実績が知っています。そこに、これからの変化を乗せていきます。

  • 機械の据付月は、稼働が落ちるぶん売上を下げる
  • 外注に出していた工程の内製化で、外注費を年150万円ほど削る
  • 断っていた仕事の受注は、控えめに半分に絞って計画に入れる
  • 機械代1,000万円は、10年で割って毎月の減価償却に乗せる

効果を控えめに見ると、この機械は償却を引く前で年200万〜250万円、手元のお金を押し上げる計算になりました。1,000万円の投資は、4〜5年で回収できます。機械の寿命は10年以上あるので、回収したあとの5年から10年は、利益が残る期間です。

銀行向けの計画は、盛らないことが大事です。強気の数字は必ず突っ込まれます。控えめに見ても回る、という形で作る。実績という土台があるから、その「控えめ」に根拠が生まれます。

帳簿から銀行の書類への一本道——14分42秒・照合242箇所・3日3時間半

AIは、堂々と間違える

順調に聞こえたと思います。ここからは、AIが間違えた話です。

日を改めて、AIが計画書一式を仕上げて、こう報告してきました。

「直さないと危ないことが1つ見つかりました。お借入が合計7,000万円あり、年間の返済はおよそ620万円。この計画だと、返済したあとに残るお金が年300万円を切ります。新しい借入を足す余裕はない水準です」

1円単位の検算と同じ顔で、AIはこれを言ってきます。数字は整然と並んでいて、選択肢まで丁寧に添えてある。知らなければ、そのまま信じたと思います。

でも、私は知っていました。

「そんな借入はありません。何のデータを見てますか。会社の借入は3,000万円だけです」

言われてAIが手元の帳簿を確かめると、毎月の返済の記録は、たしかに3,000万円の借入のほうと合っていました。答えは最初からAIの手の中にあったのに、書類に書いてある数字を信じたのです。

整った報告書を差し出すAIと、「その前提、違う」と正す人

AIが拾ったのは、申込書類の借入欄の合計でした。その欄には、代表者個人の住宅ローンも書いてあったのです。

これは誰かの記入ミスではありません。銀行に出す借入の一覧には、代表者個人の借入まで書く様式があります。一方、会社の決算書には会社の借入しか載りません。ふたつの書類が食い違って見えるのは、間違いではなく様式の仕様でした。

前提を入れ替えると、返済の絵は一変しました。返済後の手残りは、年300万円を切る計算から、年400万円以上へ。 ここから新しい借入の返済を払っても、機械の効果を足せば、まだ余裕が残る計算です。同じ帳簿、同じ計算式で、です。

AIの計算は正確でした。間違っていたのは、計算の入口に置いた前提のほうです。前回の記事で、freeeに足りないものの3つ目に「経営者本人の生活の実態。個人の借入は、どんな会計ソフトにも入っていない」と書きました。まさにそれが、AIの目の前で起きた形です。会計ソフトの外にある事情は、数字をいくら検算しても出てきません。本人と、本人の隣にいる人間が埋めるところでした。

ちなみにこの日、AIはほかにも、今回の目的と関係ない帳簿の細かい穴を「重大な発見です」と拾ってきています。放っておくと、そちらへ突き進む。どこへ向かうかを決めるのも、人間の仕事のうちでした。

紙の上でだけ、足し算が合わない

もうひとつ、印象的だった間違いを書いておきます。

機械代の月割りは、端数まで入れましょうと私が決めた数字でした。ひと月8.3万円。セルに入っている値は正しいのに、印刷した計画書では「8万円」と表示されていました。書式が小数を四捨五入していたのです。

計算はすべて8.3万円で走っているので、Excelの中では何も間違っていません。でも、紙の上では内訳を足しても合計に3千円ほど届かない。銀行の担当者が電卓を叩けば、引っかかるところです。

これは数字の突き合わせでは見つかりません。セルの値そのものは合っているからです。見つかったのは、提出直前にPDFを画像にして、人の目で眺めたからでした。

仕上げは、ひとことで

提出の前に、私がAIに頼んだのはひとことです。ミスや矛盾がないか、自分で確認して。

AIは機械の照合を242箇所かけて、自分のミスを2つ見つけて直しました。 数字を変えたのに説明のメモを直し忘れていた箇所と、一覧の表に暗算で数字を入れて、数百円ずれていた箇所です。

面白い分担だと思います。前提の間違いを見つけたのは人間。値の間違いを見つけたのは機械の照合。表示の間違いを見つけたのは人の目。それぞれ、捕まえられる網が違います。

間違いを捕まえた3つの網——人間・機械の照合・人の目

白状しておくと、間違えたのはAIばかりではありません。途中で基準にする書類を取り違えて、AIに逆の書類を直させかけたのは私です。 お互いさまでした。

計画書は、損益計算書と銀行の書式の2枚組で仕上げました。計画の最終月の利益と、銀行の書式に書く「軌道に乗った後」の利益が、突き合わせるとぴったり同じ数字になる形です。 銀行は2つの書類を見比べます。そこで数字がずれない形を、先に作っておきました。

申し込んで、下りた

申し込みの結果、融資は下りました。設備資金の1,000万円と、運転資金です。

かかった手間を振り返ると、作業したのは3日、合わせて3時間半ほど。AIへの私の発言をログから数え直したら、言い直しも含めて13回でした。そのうち、判断らしい判断は2回です。

残りの時間でAIがやっていたのは、実績の転記と、科目の統一と、1円単位の照合と、書式への流し込み。人間がやると一番時間のかかる部分が、そっくり向こう側に移った計算になります。

会計ソフトというのは、仕訳のデータが入ったデータベースであり、それを計算する巨大な計算機です。MCPでAIをつなげられるようになったことで、ただの計算機が、創造的な事業計画書を生む強力なエンジンになりました。

帳簿は、融資の武器になる

前回の記事で、freeeは巨大な計算機で、その中にあなたの会計データが入っている、と書きました。

今回分かったのは、その計算機は融資の場面で一番強い、ということかもしれません。銀行が知りたいのは、過去の実績と、実績に根拠を持つ未来の数字。その両方が、帳簿から出てきます。実績があれば、予測は作れる。今回下りた融資は、その2つから出てきました。

帳簿が鍵になり、銀行の扉が開く

もしあなたがfreeeを使っていて、設備投資や借入を考えているなら、材料はもう帳簿の中に揃っています。試しに、freeeから損益のレポートを1本書き出して、AIに読ませてみてください。自分の帳簿がどれくらい喋るか、それで分かります。

ただし、この記事の間違いたちを思い出してください。AIは、書類のどこかにあった数字を拾って、検算と同じ顔で堂々と間違えます。会計ソフトの外にある事情を埋め、AIの報告を疑い、行き先を決める。そこは人間の仕事として残ります。

自分でやってみるのもいいと思います。難しければ、私のように経営とAIの間に立つ人間と、御社の中にこの仕組みを作ってしまう手もあります。一度作れば、計画書は「大仕事」ではなく、帳簿の出力のひとつになります。

融資が下りて、A社で次に動き始めたのは機械の搬入日程でした。書類づくりが早く終わると、その先の話が早く始まります。たぶん、それが一番の効果です。


※この記事の事例は、守秘のため業種・金額・時期などの設定を変えています。かかった時間と回数、freeeの数字との1円単位の突合、AIが間違えて人が正したやりとりは、記録から引いた実際のものです。

このブログについて — きれいな成功談は書きません。決算書の読み取り、レジデータの分析、銀行に出す書類づくり。AIを実際の経営の仕事に使って、うまくいったことも、AIが間違えたことも、そのまま書いています。お仕事のご相談はご相談からどうぞ。

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