AIとの付き合い方

1年前の会議に質問ができますか?

A AIKA 読了 約5分

会議のテーブルで交わされた発言が、文字の入った記録になり、棚に整列した台帳になって、虫めがねで探せる状態になるまでの流れ。左に開いたノートと録音機と3つの吹き出し、中央に文字が並んだ書類の束、右に棚に並んだ台帳と虫めがね

手元のAIに、こう聞いてみます。

「土地が出た会議はどんな内容でしたか」

一瞬——計ったら0.05秒でした——で、半年分の議事録81件の中から2件が返ってきます。ある会社の計画づくりを詰めた回と、土地の評価について資料を確かめた回。開けば、いつ、誰が出席して、何が決まり、何が宿題として残ったかまで書いてあります。

これができると、仕事の景色が変わります。実際の発言に基づいた経営分析ができます。過去3回分の議論を踏まえた提案書の下書きが作れます。会議で決まった方針のまま、スライドやチラシの叩き台まで一息に作れます。

議事録が「読み返すための記録」から「仕事の材料」に変わる。今日はその話をします。

AIに「土地が出た会議はどんな内容でしたか」と聞くと、議事録2件が返ってくる画面のイメージ。それぞれのカードに日付、会議名、決まったこと、宿題の4行が入っている

便利になった議事録は、どこで止まるか

PLAUD NOTEの本体。名刺サイズの薄い金属の板で、上部に録音ボタンとマイク、表面に細い縦の溝が並んでいる

写真: PLAUD公式サイトより

会議の録音をAIが文字起こしして、要約まで作ってくれる。そういう道具が当たり前になりました。

たとえばPLAUD NOTEのようなAIボイスレコーダーは、よくできた道具です。公式サイトによれば、中身の要約にはGPT-5.5やClaude Sonnet 4.6といった最新鋭のAIが使われています。つまり、要約の賢さはもう問題ではありません。

問題は、そこで止まることです。

多くの現場で、議事録はこういう旅をします。録音する。文字起こしされる。AIが要約する。要約をメールで共有する。終わり。

その要約は「その日のための文書」です。会議に出ていない人が、当日ざっと把握するには役立ちます。でも翌月、誰も開きません。1年後、「あの時、社長はなんと言っていたか」と聞かれて、答えられる形では残っていません。要約の外に落ちた発言は、もう戻ってこないからです。

録音機の中で、録音機の使い方をしている限り、議事録は録って流すだけになります。

議事録がたどる一本道の路線図。録音、文字起こし、要約、メールと4つの駅が並び、要約から先は線が灰色に変わって、最後は車止めで途切れている。その先の空白に「翌月、誰も開かない」と書かれている

惜しいのは道具ではありません。道具の先に、仕事の置き場がないことです。

むしろ、こう言った方が正確です。この種の道具の本当の値打ちは、要約ではなく、会話を正確に文字にしてくれるエンジンにあります。人が何人も話し、方言も混じり、専門用語も飛ぶ打ち合わせを、そこまで正確に文字にできる道具は、少し前まで手の届く値段では存在しませんでした。この後に書く私のやり方は、正確な文字起こしがなければ一行も成り立ちません。土台として、こういう道具が要るのです。

後工程で使える議事録の作り方——名札を付けて、一つの帳簿に

私の議事録の仕組みの全体図。録音から文字起こしの全文が生まれ、Claudeが日付・案件名・種類・要旨・タグの5行の名札を付け、一つの帳簿(81件)に貯まる。そこから検索・経営分析・提案書・スライドの4つに矢印が伸びている。名札から帳簿への矢印には「AIが機械的に読むため」と注記されている

私のやり方の骨は、3つだけです。

第一に、議事録は要約ではなく「文字起こしの全文」で受け取ります。要約は後からいくらでも作れますが、全文は後から作れません。そして大事なのはここです——全文が残っているから、後から検索できる。検索できるから、役に立つ。要約しか残っていない議事録は、要約の外を二度と探せません。

第二に、その全文をClaudeに渡して、決まった形式の「名札」を付けます。名札と言っても、難しい仕組みではありません。これは人が読み返すためのものではなく、AIが機械的に読むために付いているだけです。中身は日付、案件名、会議の種類、要旨、タグ。たとえばこんな具合です。

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date: 2026-06-12
project: ○○支援/△△社
type: 会議
summary: 初回ヒアリング。販路・繁忙期対策・後継者問題を議論
tags: [相談, 販路, 後継者]
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この5行があるだけで、AIは半年分の山から「あの会議」を一瞬で特定できるようになります。私は、一人で歩きながら録った方針メモには「これは検討中のメモであって、先方の正式な合意ではない」という但し書きまで名札に入れます。後工程のAIが、決まったことと検討中のことを取り違えないためです。

第三に、名札を付けた議事録を、一つの場所に貯めます。私の帳簿には、この半年で81件が貯まりました。冒頭の検索が0.05秒で済むのは、この置き方のおかげです。

特別な道具は要りません。フォルダ一つと、名札のルール一枚と、文字起こしをAIに渡す習慣だけです。細かい作り方——名札の項目をどう決めるか、文字起こしをどう自動で取り込むか——は、次の記事で工程を一つずつ分解して書きます。

実例——ある電気工事会社の、4か月

銀行からの借り入れの相談に乗っている、ある電気工事会社があります。社長との面談や打ち合わせは毎回録音して、この形の議事録にして残しています。この4か月で4本になりました。

この会社の議事録は少し凝っていて、発言が話題ごとに番号で区切られ、それぞれに「決算書のどの科目の話か」まで紐づけてあります。保険の話なら保険料控除の欄へ、共済の話なら該当する控除の欄へ。会話が、そのまま数字の地図に載っていく形です。

議事録の1ページの構造。左側に番号・時間・話題の3行が入ったブロックが4つ縦に並び、右側に決算書の科目一覧が並んでいる。左のブロックから右の科目へ線が3本渡っていて、4つ目のブロックには線がない

すると、こういうことが起きます。

次の面談の準備は、「これまでの議事録を踏まえて、論点を整理して」から始まります。AIが過去の発言を並べて、決まったこと、保留のままのこと、社長の温度が変わったところを出してきます。私は記憶を探る代わりに、それを確かめるだけです。

銀行に出す計画書の下書きを作るときも同じです。「社長はこの件について、どう言っていたか」を、印象ではなく発言そのもので確認できます。実際、面談中の会話で金額がひとつ判明しただけで、それまで「不明」だった分析の空欄が一つ埋まったことがあります。会話が、そのまま分析の材料になった瞬間でした。

「あの時、社長はなんと言っていたか」。この問いに、記憶ではなく記録で答えられます。

4か月分の対話が、消えずに積み上がっていく。次に会う日、私は白紙からではなく、続きから始められます。

議事録は、資産にできる

まとめます。

議事録は、取って終わりの記録ではなく、貯めて使う資産にできます。必要なのは、賢い要約ではなく、全文と、名札と、置き場です。AIの記憶に頼るのではなく、AIがいつでも読める帳簿を作る。私の事務所では、それを議事録から始めました。

もしあなたの手元に、読み返されていない議事録が眠っているなら。まず直近の文字起こしを1本、要約させずにそのままAIに貼って、こう聞いてみてください。

「この会議で決まったことと、宿題になったことを、発言のまま拾って」

帳簿づくりは、その一歩から始まります。

議事録の帳簿が何に化けるかの図。中央の「議事録の帳簿」から扇形に5本の矢印が伸び、経営分析、提案書、スライド、チラシ、次回の論点整理の5つに繋がっている

次回は、この帳簿の作り方——名札のルールの決め方と、文字起こしを自動で取り込む仕組み——を、自分でも作れるように工程を分解して書きます。

議事録の運用で「うちはここで詰まる」という場面があれば、コメントで教えてください。次の記事の参考にします。

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